理数男子のつぶやき

まだまだ頑張る社会人1年目のブログ。

レポートを書いた記録[1年前期,教職論]

 不定期で上げていく、自分が実際にに大学に提出したレポートを晒していくシリーズ。

 第2弾は、2018年度前期「教職論」の最終レポートをあげてみようと思います。

 

問題 「個性を大切にする教育」とはどのような教育か?
文字数制限:1000文字以上 かかった時間:6時間くらい
文献制限:1冊以上
評定:A(優)

 

ICTを利用した新しい教育

 

1.はじめに

私が考える「個性を大切にする教育」とは、現代のICTを使った教育である。その理由として、ICTには個人のそれぞれの個性を大切にし、それを伸ばしていける仕組みが多くあるからだ。よって、本レポートではまず、上記にある理由の中でもICTが持つ「個性を大切にし、伸ばしていける仕組み」について議論し、次にそれに対する問題点を提示し、問題点に対する改善点について議論したのち、すべての意見を総括した上で現代のICTを利用した教育がどうあるべきかについて考察をしていく。

 

2. ICTを利用することによる「個性を大切にする」ことの利点

 まず初めに、ICTを利用することによって「個性を大切にする」ことについてどのような利点があるかにおいて考察する。ICTの活用例として、小・中学校などの初等中等教育が挙げられる。中川・苑氏によると、このICTを使う教育について (A)思考を深め、広げるためのICT活用、(B)表現するためのICT活用、という2つの点について議論していた。(中川・苑, 2017, pp.33-36)よって、ここではこの2つの点について初等中等教育の使用例から、ICTと学校教育界全体ついてのかかわりについて考え、「個性を大切にすること」とどのようなかかわりがあるかについて考察する。

(A)思考を深め、広げるためのICT活用

一つ目の初等中等教育においての使用例として、中川・苑氏によると、個人学習に使える環境になると、デジタル教材を用いてそこに自身の考えを書き込んだりすることによって、これまでの紙のノート・ワークシートとは違うデジタルノートの活用ができること、意見整理などの場面でタブレット端末などを利用して資料の一部に書き込んだりできること等の児童生徒の考えを可視化するのに有効である(中川・苑, 2017, pp.34-35)と述べている。そこから考えると、今まででは、様々な教育の場で学習の到達度などを図る際は、テストやノートの確認など実体あるものに対して評価や分析を行っていた。その際に、教師は全て個々の分析をしたり、多くの情報処理をしたりする精神的労力などを費やした上、ノート等を運び、配布する肉体的労力を費やした。それに対して、ICTを利用した教育はタブレット等の軽量な情報端末を用いて、逐一教員などを含めた保護者が生徒の情報を素早く見ることができ、そこからAIなどが教員にとって本当に必要なデータを取捨選択し、それを教員に提供することで、迅速に教員がそれぞれに対応する教育方法・方針を提供することができる。そしてそれをもとに、生徒一人一人の個性それぞれに対応する教育をすることで、それぞれの思考を伸ばしたり広げたりすることができる。

(B)表現するためのICT活用

 二つ目についての初等中等教育について、同様に中川・苑氏によると、発表場面においても、単に資料を示すだけでなく、タブレット端末や電子黒板を活用すると、複数の資料をテンポよく示すことができたりする。また、タブレット端末を活用して新聞などを製作する作業を行うと「加工・修正が可能である」などの点が挙げられる(中川・苑, 2017, pp.34-35)と述べている。確かに、考えを表現するためにもICTはよく使われる。例えば、大学などの高等教育機関においても、自身の考えを発表する際にpowerpointなどのプレゼンテーションファイルを用いる、などをすでに行っている。これを「個性を大切にする教育」面でとらえれば、多くの情報から取捨選択できる点が挙げられるだろう。例えば、先ほど言ったようなプレゼンテーションは、その点が強いものであると言える。上で述べたように、プレゼンテーションでは複数の資料をテンポよく示すことができる。これは、プレゼンテーションの資料を製作するときに、インターネット、電子書籍等の数多のメディアからの資料を享受することができ、それらの情報から個人で大切だと思った情報を取捨選択し、一人一人違うものを作ることができることから、その資料に個性が現れてくる。また、発表することにより、それぞれの個性の多様性を生徒間で認めることができ、教員はそれをもとに新たな個性を発見できたりする。

 

3.ICTを使うことによる教育上の問題点と改善方法

 これまで利点を述べてきたのだが、現代のICTを使うには、それに対して問題点も生じてくる。よって、この章ではその問題点を提起したうえで、それに対しての改善点を述べていく。

 一つ目の問題は、ICTを使うための校内環境の整備である。最近は、昔と比べて安価になったとはいえ、情報端末は精密機械であるために未だ高価である。よって、生徒一人一人に情報端末を配布するとなると、コスト面で相当な負担となってしまう。しかも、情報端末を購入するだけではなく、校内のネット整備、端末の充電器の設置、専用のアプリケーションの整備など、するべきことが多い。その問題の改善策については、費用・コスト面では教員が率先してICTを活用した授業を展開していくことで、地方自治体にアピールしていき、次に端末の整備面で言えばネット整備業者等と綿密に検討を続けていき、学校間でのやりとりを増やすことで問題の解決を図ることが求められる。また、教員の年齢などを考慮すると未だネット環境に慣れていないことも考えられるため、そのようなICTの活用等に関する教員研修などの拡充が求められる。

 二つ目は、個性を大切にしすぎることへの弊害である。そもそも、教育とは個性を大切にするだけではなく、社会性を教えることも入っているはずである。個性というと、個人をイメージしがちであり、それは集団行動が例に挙げられる社会性とは真反対のものである。よって、個性を大切にしすぎるとその対極にある社会性は身につかない。例えば、ICTによる個性を大切にする教育の一環で生徒が個人で学びをする時がある。それは、個人という空間では習熟度別・個性に応じた教育が提供されているわけだが、その個人から離れて教室という空間でそれを考えると、それはただの自主学習であり、教員はその空間において意味を為さない。また、最近では平成28年度の内閣府の調査によると、青少年の80.2%がスマートフォンなどの情報端末でインターネットを利用しているのだが、まだ情報倫理について備わっていない学生が多い。そこからネットいじめなどの生徒の個性を生徒間で叩くような問題が、現在進行形で起こっているため、ICTによる情報端末の使い方にも未だ最新の注意を払わなければならない。それらの個人を大切にすることへの改善案であるが、やはり情報端末に頼らない授業形態を残していくのが有効な手段であると考える。理由として、情報端末に頼らない授業形態のみが持つ利点が存在するからだ。今まで言った通り、情報端末を使いすぎると様々な障害が起こってくることは述べたが、情報端末に頼らない授業形態を展開していくことで、顔と顔を合わせたコミュニケーションをとれたり、集団として行動したりすることで社会性を手に入れることができる。また教員側でも、確かに情報端末による意見の集約も必要だが、やはり教員は現場主義であり、生徒の表情や行動を観察する授業が求められる。

 

4.まとめ

 教員とは、「反省的実践家である」と言われている。なぜなら、教員は実践経験を通じて常に学び続ける姿勢が求められるからだ。ここから、反省的実践家としてのキャリアを積んでいくには、前に述べた通り、教員は生徒の個性を育てることと生徒の社会性を育てることの2つが同時に遂行されることが必要であり、それらは生徒との対話などを通じた実践的な経験によって行われるべきものである。そして「個性を大切にする教育」としてICTを利用することを述べたが、教育者は、これらの技術を利用するために、まずは情報倫理をはじめとした情報端末の扱い方を明確に理解し、その活用方法について理解するべきである。そして、ICTと今までの情報端末に依らない教育をアクティブ・ラーニングに昇華させた、教員自身も機械に依らずに実践経験を積めるような教育として組み合わせることで、個性を大切にし、生徒が主体的に取り組み、社会性を手に入れられる教育形態が実現するだろう。

 

5.参考文献

・中川一史・苑復傑(2017)『教育のためのICT活用』 放送大学教育振興会

内閣府(2017) 『平成28年度青少年のインターネット利用環境実態調査 調査結果(速報)』

閲覧日:2018年7月11日

http://www8.cao.go.jp/youth/youth-harm/chousa/h28/net-jittai/pdf/sokuhou.pdf